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2013年06月22日

怪我をしやすい投球フォーム

 怪我をしないために守るべきポイント

前足着地時の正しいコッキングの位置

 オーバーハンド、スリークォーターの場合
 投球動作(コッキングの段階)で前足を着地したとき、投球側の前腕が垂直に立っていて、上体は開いていない(両肩を結ぶ線がホームプレートの方向を向いている)、投球側の肘の高さは両肩を結んだ線よりも高くならない。

 これは、怪我をせずに長い間活躍している選手の特徴です。

 では、このような投球フォームをしている選手を見てみましょう。

ニューヨーク・ヤンキースのマリアーノ・リベラMariano Rivera(43歳)
身長  6' 2" =約188 cm
体重 195 lb =約88.5 kg
通算629セーブ(大リーグ記録)、奪三振率8.3/9回、四球率2.0/9回
前足着地時のコッキングの位置
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フィラデルフィア・フィリーズのクリフ・リーCliff Lee(34歳)
身長 6' 3" =約190.5 cm
体重 205 lb =約93 kg
通算132勝80敗、奪三振率7.5/9回、四球率2.0/9回
肩、肘に大きな怪我はしたことがない。2008年アメリカンリーグのサイヤング賞受賞
前足着地時のコッキングの位置
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トロント・ブルージェイズのマーク・バーリーMark Buehrle(34歳)
身長 6' 2" =約188 cm
体重 230 lb =約104.3 kg
通算176勝136敗、奪三振率5.1/9回、四球率2.0/9回
球速は遅く速球で89マイルしかないが、制球が良く、怪我にも強く、2012年までに12年連続で2桁勝利、12年連続で200イニング以上投球している。
2007年ノーヒット・ノーラン達成。2009年完全試合達成。
前足着地時のコッキングの位置
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 3人に共通なのはテイクバックで肘を両肩を結ぶ線よりも高く上げず、かつ背中側に大きく引かないで、一度肘を伸ばすようにして素直に前腕を垂直に立てている点です。
 そのため肩、肘に大きなストレスがかかっていません。

怪我をしない投球フォームはコントロールも良い

 3人ともコントロールが良く、偶然にも3人の四球率/9回は2.0と低く、まったく同じだというのは注目に値します。

怪我をしないテイクバックの形

肘は一度まっすぐ伸ばすか、軽く曲げる程度にして、それから前腕を立てる(コッキングのトップ)
昔の投手はこの形が多かったように思います。大リーグでは現在でもこの形の投手は多くいます。日本では少なくなったようです。この形は物理的にも人体の解剖学的にも球速は出るし、怪我も少ないと思います。

マリアーノ・リベラのテイクバック
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クリフ・リーのテイクバック
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3人のコッキングのトップ(前腕を垂直に立てた状態)での肘の位置
 両肩を結んだ線よりも低い位置にあります。

大リーグ300勝投手のトップの肘の高さ
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 大リーグで怪我もなく長く投げて活躍した投手は同じくトップでの肘の位置は両肩を結んだ線よりも低くなっています。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソン、トム・シーバー、グレッグ・マダックスといった300勝以上を挙げた大投手はみんなそうです。
 みんな骨盤を回転させる投げ方をしているので、やがて肘の位置は遠心力で自然と両肩を結んだ線上に来て一直線に並ぶので問題はありません。

トップで肘の位置は高くしなければいけないという本当の意味

 これは紛らわしい表現で、上に上げた300勝投手たちと逆のことを言っています。すべての投球フォームでトップを高くすることは当てはまりません。逆に怪我につながる危険性があります。特に肘を高くして、背中側に大きく引いてしまうと肘、肩の怪我につながります。

 トップで肘の位置は高くしなければいけないという意味を自分なりに考えてみると、前腕を立てて肘を使い、上体の軸を傾けずに投げる場合にのみ当てはまる表現ではないかと思っています。ソフトバンクの摂津投手のような投げ方に言える表現だと思います。昔の投手では江川卓投手でしょうか。

ソフトバンク摂津投手のトップの肘の高さ
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 摂津投手はトップでの肘の位置が両肩よりも高くなっていますが、肘を背中側には大きく引いていません。
この投げ方で肘が下がってしまったら、下半身が使えず手投げになってしまいます。右投手の場合、肘を下げると重心の位置が3塁側にずれてしまい、前足を着地した際に左の股関節の位置が静止せず、体全体が3塁側に流れてしまい右肩の縦回転の速度も上がらず、肩、肘に大きな力を入れないと球速が上がらないためではないかと思っています。

怪我をしないために守るべきポイントが守られなくなる投球フォーム上の腕の形(テイクバックの形)

@inverted W(インバーティッド・ダブル、逆W)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Wをひっくり返した形になっている。
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inverted Wに関する記事はクリス・オリアリー氏のホームページChrisOLeary.comに詳しく解説が載っています。

THE INVERTED W DEFINED
Inverted W(逆W)の定義


I define the Inverted W as being more than 90 degrees of shoulder abduction with the Pitching Arm Side (PAS) elbow above the level of the shoulders (aka hyperabduction) combined with 5 or more degrees of shoulder horizontal adduction (PAS elbow behind the shoulders).
Inverted W(逆W)は肩が90度以上外転(腕を真下に下げた上体から腕を水平以上に上げること)して、投球側の腕の肘が肩の高さよりも高くなり(過外転とも言われる)、さらに肩は5度以上水平内転(投球側の腕の肘が肩よりも後にくること)すること

inverted Wはステファン・ストラスバーグ投手の投球イニング制限に関する話題ですっかり有名になったようです。最近ではセントルイス・カージナルスのアダム・ウェインライト投手が2009年、2010年にそれぞれ19勝、20勝を挙げたあと、2011年に肘の内側側副じん帯が断裂してトミー・ジョン手術を受けたこともinverted Wに関心が集まる理由です。アダム・ウェインライト投手は2013シーズン好調で9勝3敗(6月8日現在)の成績です。

inverted Wはピッチングコーチのポール・ナイマンPaul Nyman氏が大リーグに広めたようです。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソンを指導した投手コーチのトム・ハウス氏もinverted Wの普及にかかわったようです。南カリフォルニア大学でも最近まで指導していたそうです。

ステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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断裂が起こる肘の内側側副靱帯の場所(前束)、右肘を体の内から外に向かって見た図
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inverted Wの問題点
 上のストラスバーグの連続写真に見られるように、前足を着地してから肘を急激に前に加速して押し出すので、前腕が急激に後に倒れる(lay back)。lay backの角度も大きくなり、肘の内側(小指側)の内側側副靭帯に急激に引っ張り応力がかかってしまう。繰り返し応力がかかることにより、靭帯の微小断裂が積み重なって行き、ある時点で靭帯断劽が起こり得ます。靭帯が断劽するときにはプチッという音(英語ではpop)が聞こえるそうです。

 上腕の動きを見ると、右肘を両肩を結んだ線よりも高く上げるので、このときに内旋が起き、続けて外旋(意識的に行なう能動的な動きと、慣性【前腕は同じ速度を維持しようとするが、肘は前腕よりも加速して前に進むため】による受動的な動きが重なる)が起き、lay back(前腕の遅れ)が最大になる。このとき、外旋も最大となる。これから、前腕は前に倒れて行く(内旋が始まる)。

 つまり、上腕には内旋、外旋、内旋という動きが順番に起きます。上腕の動き(回転角度の動く範囲)は大きくなるので、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れてしまいます。ストラスバーグ投手が前足を着地して、ボールを投げる側の前腕が垂直になった時の上体の向きをみると、ホームプレートの方向を向いています(体が開いてている、左肩の開きが早い)。また、内旋、外旋、内旋という動きが急速に行なわれるので(大きな加速度が生じる)、肩にも大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wの腕のフォームを作ってしまうと、下半身を使い、肩、肘に力を入れないで投げたとしても、大きなlay backが起こり、肩、肘には大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wは肩、肘の強度が、十分にあれば効率的な投げ方と言えます。内野手とか投球数が少ない場合には、クイックで投げれて有効ですが、投手の場合、球速も速く、球数も多いので長期的な健康を考えた場合には問題があると言えるでしょう。

 ストラスバーグ投手のように、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れる度合いが大きい投手ほど、肩、肘に故障が出てくる時期は早まります。
 

アダム・ウェインライトの投球フォーム
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トミージョン手術を受けることになった藤川球児投手のカブスでの投球フォーム
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元ヤクルトスワローズ伊藤 智仁投手、150キロを超える速球と高速スライダーで強い印象を残したが、肘、肩の故障に悩まされ若くして引退(31歳で)。3度肩の手術を受けた。肘痛、ルーズショルダー(非外傷性肩関節不安定症)に悩まされ、デビューした翌年から2年間は一軍での登板はなかった。
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Inverted W(逆W)のフォームを作ると、肩関節を覆う関節包という繊維状の軟部組織の下部に無理な引っ張り応力がかかり、肩関節が緩くなりやすいそうです。肩の脱臼と同じ部分が損傷を受けるそうです。伊藤投手は3度目の手術の後、投球中に亜脱臼を起こしています。33歳の誕生日の前日に引退を表明。

元中日ドラゴンズのストッパー、最速157キロを投げた与田剛投手、肩、肘の故障で活躍できたのは数年間であった。
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inverted Wのフォームのため下半身が有効に使えていません。コッキング動作で右前腕が垂直になったとき(トップの位置)で上体が完全にホームプレートの方向を向いていて、腕だけで投げているために、肩、肘に大きなストレスがかかっています。

日本ハム武田 久投手、2013年6月2日右肘痛のため登録抹消された。
テイクバックで右肘が両肩よりも高くなり過ぎており、肘を痛めやすい投球フォームです。
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西崎幸広投手、日本ハム、西武に在籍していた。デビューして3年間は46勝を挙げ華々しい活躍をしたが、その後は安定した活躍は出来なかった。15年間で通算127勝102敗、22セーブ、防御率3.25の成績を残しました。近鉄の阿波野投手と新人王を争い、僅差で賞を逃してしまいましたが、通算勝利数では50勝近く上回っています。
 投球フォームを見直してみると、Inverted W(逆W)のテイクバックをしており、これが肩、肘に悪影響を与えたのではないかと思われます。
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Ainverted L(インバーティッド・エル、逆L)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Lをひっくり返した形になっている。
inverted Lの定義:肘が両肩を結ぶ高さまで上がり、かつ肘が背中側に5度以上引かれている。
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2013年にトミー・ジョン手術を受けた吉見一起投手(中日ドラゴンズ)の投球フォーム
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テイクバックでinverted L(逆L)の形をつくると、inverted W(逆W)と同様、コッキング(前腕を立てる)動作のタイミングが遅れてしまい、肘、肩に大きなストレスがかかりやすくなります。
 前足を着地したときに、前腕がまだ垂直(地面に対して)になっておらず、前腕が垂直になったときには肩が開きすぎ、上体がホームプレートの方向を向いています(ストラスバーグ投手と同様)。

元中日ドラゴンズの左腕エース今中慎二投手、肩の故障のため30歳という若さで引退しています。
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ソフトバンク斉藤和巳投手、79勝23敗という脅威的な勝率を残している。右肩痛で3度の右肩腱板の手術をしている。まだ、現役は引退しておらず、コーチ契約中で、まだ現役へ復帰の可能性は0ではないようです。
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inverted L(逆L)のフォームをしている大リーグの現役200勝投手、ティム・ハドソン(37歳)
2013年6月14日現在、通算201勝110敗、通算防御率3.45、奪三振率6.06/9回、四球率2.70/9回
2008年8月にトミー・ジョン手術を受けました。
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Binverted V(インバーティッド・ブイ、逆V)

投球側の腕の形はinverted Wと同じだが、グラブ側の腕の肘は通常のフォームのように肩よりも高く上がっていません。

八木智哉投手、元日本ハム、現在オリックス・バファローズ在籍
日本ハム1年目は12勝を挙げ、パリーグ新人王に輝いたが、その後は肩痛に悩まされている。
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阿波野秀幸投手、近鉄、巨人に在籍していた。近鉄で15勝を挙げ、新人賞を獲得。3年間はすばらしい活躍をしたが、ピークはわずか3年であった。デビューして3年間で48勝を挙げたが、14年間で75勝68敗、防御率3.71の成績であった。八木智哉投手と同じくinverted Vのテイクバックをしており、コッキングのタイミングが極端に遅れる(肩が開く)のが長く活躍できなかった理由ではないかと思われます。骨盤も前足を着地する直前まで回転させないのも大きな原因です。
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まとめ

@テイクバックでinverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとると、内野手型、ショートアーム型の投球フォームとなる。

 肘関節を中心に前腕を高速で回転させる投げ方になり、肘に大きなストレスがかかって怪我をしやすくなります。また肩にも大きなストレスがかかります。

 肘を高速で回転させると、関節の軟骨も磨耗が激しく、肘を伸ばしたときに、関節内で骨と骨が急激に衝突するので、骨棘(骨の端がトゲのように出っ張ってくる)ができ、骨棘が欠けて分離したり(関節ネズミ)、骨折したりすることもよくあります。トミー・ジョン手術をする際は、同時に関節ネズミを取り出すこともよく行なわれます。

Ainverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとる投手には軸足を蹴り出すときに、前足を着地させる直前まで、骨盤を回転させずに投げる投手が多いので、このことがさらに怪我をしやすくしています。

B肩、肘は円を描くような動きが大事

テイクバックで肘は円を描くようにしなければいけません。

肩が円軌道を描くには、どうすればよいのか?

 円軌道を水平方向(横回転)と垂直方向(縦回転)に分けて考えます。

 水平方向の円軌道を描くには骨盤を軸足の蹴り初めから回転させる必要があります。前脚にかかる重力を利用して、膝を伸ばして脚を水平に回転させながら前に振り出します。
 軸足の股関節の外旋に引き続いて、膝の皿が前の方を向いて来たら(横向きから45度程度回転したら)軸足側の下肢の関節すべて(股関節、膝、足関節、足の指の関節)を一気に伸ばすことによって骨盤は速く回転します。骨盤の回転に伴って肩に水平方向の回転が得られます。

 垂直方向の円軌道を描くには上体の軸を少し2塁側に傾け、前脚にかかる重力によるトルク(回転力、力のモーメント)を利用して上体を起こしながら型に縦回転を与えます。

 肩の水平方向と垂直方向の回転速度の比率によって腕の角度が決まります。骨盤の回転速度が速ければ腕の角度は低くなりサイドハンドスローに近くなります。垂直方向の回転速度が主体になれば腕の角度は大きくなり垂直に近くなります。通常は両方の回転がバランスよく合わさり、スリークォーターになるのが最も多いパターンです。

 腕には慣性があるので、進む方向と逆の運動(上腕の内旋、肘を背中側に大きく引く動作「前足を着地寸前で行なうと非常に危険」)をさせると、肩関節、肘関節に大きなストレスがかかるので危険です。

 腕にはホームプレート方向のエネルギー(直線的エネルギーおよび回転エネルギー)を軸足の蹴り始めから積極的に与えることで、投球フォームはスムースに流れるようなフォームになり、怪我をしにくくなります。

 骨盤を回転させる際、等速度になると腕の遅れはなくなり、両肩と肘の位置は一直線上に揃うのですが、加速する際は腕の遅れが大きくなるので肩に大きなストレスがかかります。急加速は厳禁です。最初はゆっくりと、次第に回転速度を上昇させることが大事です。
 また、投球側の腕は肩で最初、引っ張るようにします。腕が両肩を結ぶ線からあまり遅れずに回転してゆくことがポイントです。

 肘をあまり曲げない投げ方をする人ほどこのポイントを意識する必要があります。この点に注意すれば、肘をあまり曲げない投げ方は肘に最もストレスがかからず、肩にも大きなストレスはかからず、トータル的に見て、最も怪我をしにくい投げ方だと思います。しかも球速も最も出やすいと思います。

 大リーグではボブ・フェラーの投げ方が参考になります。日本のプロ野球の投手では江夏豊投手の投げ方が参考になります。

江夏 豊投手(1967-1984)、通算206勝158敗、193セーブ、防御率2.49。『20世紀最高の投手の一人』、オールスターゲーム9連続三振、最高球速160キロ近かったと言われている。シーズン401個の三振記録はいまだ日本記録。
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江夏 豊投手のテイクバック(外野手型、ロングアーム型)
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江夏投手は1年目は肘を曲げたまま投げていました(内野手型、ショートアーム型)が、2年目からは肘を早めに伸ばして腕を長くして投げるようになり(外野手型、ロングアーム型)、肘の痛みもなくなり大投手へと一気に変身しました。マリアーノ・リベラ投手と同じテイクバックの方法です。2年目の20歳のとき、シーズン401三振という日本記録を達成しています。

 江夏投手は前側の脚の重力を利用して、骨盤を回転させながら軸足を蹴り始めていますが、肘を背中側に大きく引かないで(腕の慣性のため、加速でさらに後に引く力が発生するので)、肘も高く上げて(上腕の内旋が大きくなり、外旋させる仕事が必要になり前腕の遅れlay backが大きくなる)いません。

 球が速くて怪我をしない投手の投球側の肩の動く軌跡を見ると、ホームプレートに向けて直線的にはなっておらず、軸足の蹴り初めからフォロースルーまでスムースなカーブ(曲線)を描いています。江夏投手も同様です。最初から骨盤を回転させているおかげです。
 ソフトバンクの斉藤和巳投手の投球フォームと比較すると、その違いがよくわかります。斉藤和巳投手は前足を着地する直前まで骨盤を回転させていませんので、右肩の描く軌跡が直線的です。そのため肘を曲げて腕をムチのように使う投げ方になっています(内野手型、ショートアーム型)。これは日本の投手に多く見られる傾向で、松坂大輔、前田健太といった多くの投手がそうで、骨盤を回転させなかった分、前足を着地する直前に急激に腰を回転させざるを得ないので脇腹を捻りやすくなります。両投手が最近脇腹を痛めたのはそのせいだと思います。

 先発投手で最も平均球速が高いのはトミー・ジョン手術をしたワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグ投手の95.5マイルです。肘をムチのように使って、100マイル近い球を投げているので怪我をするのは避けられないのかもしれません。

右肩がボールのリリースまで直線的に前に進むステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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 2番目に球速が高いのはニューヨーク・メッツのマット・ハービー投手で、肘をあまり曲げない投げ方をしており、軸足で骨盤を積極的に回転させる投げ方をしており怪我もしにくい投げ方だと思います。

マット・ハービーの投球フォーム
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posted by HANG IN THERE YU at 09:07 | Comment(14) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして、キンブレルの記事を読んでからこのブログに興味を持ちました。
いきなりですが、藤浪投手に関して質問があります。
素人目で彼のフォームを見ていますと、投球動作において利き腕である右手が背中側に入りすぎているように感じます。あと、テイクバックでの肘の位置は
肩より低いように感じますがそこから、胸を開いたときに利き腕が遅れて出てきてムチを打っていて、投げたあと三塁側に体重移動しています。まだ高校の
時の方が僅かながら一塁側に体重移動していたように思います。
彼は大谷投手以上に日本人離れした身体なので身体造りと並行してメジャー流のフォームに少しずつ変えていけば160出すことも可能のように思います。
藤浪投手のフォームでの悪いところはどのようなところですか。また、インステップはどのような利点があり弱点があるのですか。藤浪投手は直すべきですか。
Posted by 名無し at 2013年06月19日 20:47
藤浪投手に関しての質問

回答:
 藤浪投手のテイクバックで肘の高さは両肩を結んだ線よりも低いのですが、肘は背中側に少し大きく引かれています。また、手、前腕がが垂直に下を向いています。ダルビッシュ、楽天の田中将大、広島の前田健太、中日の吉見一起投手も似たようなフォームをしています。肘が両肩の高さまで上がればinverted L(逆L)というので、藤浪投手は完全には逆Lとは言えませんが、完全なinverted Lの吉見一起投手は肘を故障し、トミー・ジョン手術を受けています。松坂大輔投手もinverted L(逆L)に近いフォームのせいか、トミー・ジョン手術を受けました。
 藤川球児投手はinverted W(逆W)だといえますが、同じくトミー・ジョン手術を受けました。

 このフォーム(逆L)だと投球側の前腕を垂直に立てる動作(コッキング)に時間がかかってしまい、腕を振る(肘が先行してムチのようになる)ことでボールを投げるようになります。内野手のように上体が前を向いた状態(一塁側に向く)で、肘を曲げて投げるのと似ています。この投げ方だと、ボールのリリースの前に肘が伸びている時間が短くなり、下半身を十分に利用できなくなり、肘、肩に無理な力がかかってしまいます。

 上に挙げた投手の投球フォームは普通に見ていると気づきませんが、スローで観察すると問題点がよくわかります。前足を着地して前腕を垂直に立てた時、正しいのは上体が正面を向かず、肩が開いていないことです。しかし、上に挙げた投手はみんな肩が開いています。一球一球見て行くと、肩が開いていないこともありますが、平均すると開いています。肩が開いているときには、球速が出ず、手投げになってコントロールも定まらないようです。力投型の投手は、特に試合の立ち上がり、早い回にその傾向が強いのではないかと感じています(まだ分析はしていませんが、ダルビッシュ投手はその傾向があるかもしれません)。

 肘、肩を怪我した選手の投球フォームを注意してみると、日本のプロ野球、、大リーグでも同様に、このようなフォームになっている場合が多いようです。

 逆に、マリアーノ・リベラ、日本では元タイガースの江夏 豊、巨人の内海 哲也、山口 鉄也、投手のように腕を長く使って外野手のような投げ方をした方が肩、肘に負担がかからず長く活躍できると思います。

 いつから、日本でinverted L(逆L)のような投球フォームが流行しだしたのかわかりませんが、長く活躍するのは困難な投球フォームだと思いますので、藤浪投手もできれば直した方が良いと思います。少なくとも肘の高さはもっと下げた方が良いと思います。
 藤浪投手はまだ、重心の位置が不安定です。投球の際、上体が3塁側に流れることも多くあります。少し1塁側に流れるぐらいが、重力によって骨盤の回転が加速されるので球速も上がります。

 inverted L(逆L)のようなフォームをしている大投手で、日本の投手に影響を与えたのはノーラン・ライアン、ランディ・ジョンソンではないかと思っています。
 しかし、2人ともテイクバックでは肘は両肩よりも下がった位置にあります。
 ランディ・ジョンソンは肘を背中側に大きく引いていますが、肘の高さが低めなので、故障もなく活躍できたのだと思います。また、ノーラン・ライアンは肘の高さが低めで、背中側にも大きく引いてはいません。
 2人の投手に共通なのは腕の高さです。ランディ・ジョンソンはサイドスローのような投げ方ですが、ノーラン・ライアンもよく見ると、腕の高さが低くサイドスローに近い投げ方です。つまり、両投手ともリリース前に肘が十分に伸びている時間が長く(外野手型、ロングアーム型)、また重力を利用して骨盤の回転をうまく使っています。

 inverted L(逆L)のようなテイクバックをする場合は、軸足の蹴り始めから骨盤の回転を十分に使わないといけないということです。骨盤の回転に伴って、肩が円軌道を描くことで、曲がった肘が外側に(右投手の場合、3塁側に)素早く伸びて行き、腕を長く使った投げ方になります。また肘の高さも両肩よりも十分に低めにしなければいけません(肩の内旋が抑えられる)。

 肩(上腕)は内旋、外旋、内旋 といった動きをするのですが、inverted L(逆L)では内旋が大きくなる(内旋は気をつけの姿勢から手の平を背中側に向ける動作、外旋は前に向ける)ので、肩の旋回に時間がかかり、肩の腱板にも負担がかかり、肩の外旋が(腕の慣性、惰性で)大きくなり、前腕が急激に大きく後に倒れ(レイバック)、肘の内側側副靭帯が急激に引き伸ばされ、いずれ靭帯が断裂しトミー・ジョン手術を受ける危険性が高くなります。また、肘関節の軟骨の磨耗も激しくなり、肘が伸びたときに上腕の骨と前腕の骨が激しく衝突し、骨棘(トゲ)もできやすくなり、分離すれば関節内で大きな抵抗となりひかかる感触が生じやすくなります(関節ネズミ)。また、肘の関節が緩くなり外反も大きくなり、そのことが内側側副靭帯にかかる引っ張りの力を大きくします。その結果として、球速も、コントロールも次第に低下してゆきます。球速を低下させないで長い間、投げ続けるのは困難な投球フォームだと言えます。


 投球フォームの一部だけ真似すると非常に危険です。形だけでなく動作の意味(メカニクス)を十分理解しないと怪我につながってしまいます。日本のプロ野球投手の現状はフォームの一部だけが、間違って使われているような気がします。自分の好きな投手の投球フォームをただ真似るのは危険です。プロ野球の歴史の中で、多くの人が過去に怪我もなく実績を残してきて確立された投球フォームを真似たほうが安全です。inverted L(逆L)はまだ安全性が十分に確立されているとは言えません。invertedW(逆W)、invertedV(逆V)についても同様です。
 
 インステップについての質問に対する回答:

 ランディ・ジョンソン(左投手)は結構ステップの位置を移動させています。ボールに角度(水平方向の)をつけるために、インステップして体を一塁側に移動して、右打者の内角へのボールに角度をつける投げ方をする場合が時々あります。速球を投げる場合はインステップせず、体を3塁側に傾けながら、ボールのリリース後、体は大きく3塁側に流れています。1塁側、3塁側どちら側にも体が流れない投げ方をする場合もあるようです。

 クレイグ・キンブレル、ジャスティン・バーランダー投手もインステップしています。ホームプレート方向よりも少し3塁側に足を着地しています。
 この両投手の場合のインステップはランディ・ジョンソンとは違った目的のために行なっていると思います。

 骨盤の回転を速くするためです。
 
 右の股関節を外旋させながら、あるいは前脚をホームプレートの方向に回転させながら右膝の皿の向きがホームプレートから45度ぐらいになったら右の股関節、膝、足関節、足の指の関節を一気に伸ばすのですが、インステップすると膝の向きと重心の移動方向が近くなるので、力強い蹴り出しができ、骨盤の回転速度が上がります。
 また、前足を着地してから上体は一塁側に回転しますが、その際、目線がホームプレートから離れないのでコントロールが良くなる(インステップしない場合と比べて)のではないかと思っています。
 
Posted by sh(管理人) at 2013年06月23日 07:36
レンジャーズのジョー・ネイサンとタイガースのジャスティン・バーランダーがトミー・ジョン手術をした原因はなんですか?
inverted W,inverted V,inverted Lには当てはまっていないような気がするんですが
Posted by at 2013年06月30日 08:57
マット・ハービーは肘を痛めたみたいですよ
Posted by at 2013年08月27日 12:24
 マット・ハービー投手が肘の靭帯を部分断をして、大リーグ全体が大きな衝撃を受けました。マット・ハービーは投球メカニクス的にみて、専門家からも無理のない投球フォームだと思われていて、私自身も少し他の投手と左脚の使い方が違うけれど、怪我はしにくいフォームだと思っていましたので、ショックは隠せません。

 ストラスバーグ、ハービーのように平均球速が95マイルを超えると、やはり相当な負荷が肘にかかる危険性が高いことは確かなようです。
 
 トミー・ジョン手術を受けるようになるのかどうか、まだはっきりしてはいませんが、投球フォームの修正をしないと、手術を受けてもまた再発ということになってしまいそうです。

 このアクシデント以来、マット・ハービーの投球フォームの問題点について、いろいろ考えている最中です。
 左脚の踵を一度下におろすことが問題のひとつだと思っています。軸足の外旋動作を最初からしていないことを意味しているからです。そのため、骨盤の回転動作が最初、十分に行なわれていません。前足を着地する直前からは骨盤の回転は球速に行なわれている点が、キンブレル投手、チャップマン投手等と違う点だと考えています。
 骨盤を回転させるタイミングが遅い、後半に骨盤の回転を爆発的に行なっているということです。

 分析がまとまったら、近いうちに、ブログで紹介したいと考えています。


 
Posted by sh(管理人) at 2013年08月29日 07:58
トップのときの腕の角度について質問なんですが
ゲイロード・ペリーやリベラは約90度くらい、マダックスやクレメンスは少し頭側に傾いてると思うんですがどちらのほうがより良いでしょうか?
Posted by at 2013年11月08日 03:21
キンブレル投手の記事を見てこのサイトに興味を持ちました。
私は現在、中学で投手をやっているものです。
私はグレッグマダックス投手が好きで、フォームを似せて投げてみてもいるのですが、マダックス投手は、縦回転がメインの投げ方ですか?
また、真似をすべきフォームと言えますか?
ご回答お待ちしております。
できるのであれば、マダックス投手のフォームを解説していただきたいです。
長文失礼します。
Posted by あさはや at 2015年11月14日 20:43
はじめまして。楽しく読ませて頂いてます。
質問ですが、コーファックスのフォームはどこに問題があったのでしょうか。
このサイトで推奨されてるフォームに似ているように思うのですが。
Posted by at 2015年12月20日 18:34
記事を書かれてから時間が経ってのコメントですみません。
肩を回転させずに踏み出すというのは体が開いてなくて、球の出所が見にくいため良いことだとされることがよくありますが、肩を回転させながら踏み出ことで体が開いてしまうということはないのでしょうか?
それとも体の開きは大きな問題ではないのでしょうか?
的外れな質問だったらごめんなさい。
Posted by at 2016年03月05日 21:29

質問内容)

>記事を書かれてから時間が経ってのコメントですみません。
>肩を回転させずに踏み出すというのは体が開いてなくて、球の出所が見にくいため良いことだとされることがよくありますが、肩を回転させながら踏み出ことで体が開いてしまうということはないのでしょうか?
>それとも体の開きは大きな問題ではないのでしょうか?
>的外れな質問だったらごめんなさい。

私の意見)
ピッチングの基本はサイドハンドスローであり、サイドハンドスローなら、体が開いても問題なく投げられます。テニスのオープンスタンスと同様です。
肘の伸展、肩関節の内旋で投げようとすることを、ピッチングの常識とされているのが、現在、野球界で故障者が多発している大きな原因です。
 右投手の場合、左肩を下げるようにすれば、自然と右肩が上がり、サイドハンドの投げ方からオーバーハンドへ変えることが簡単に出来ます。上体の軸を一塁側へ傾ければ、サイドハンドからオーバーハンドになります。
 稲尾和久投手のピッチングを見ると、左足の着地が一塁側へと開いて着地しており、体が開いた状態で問題なく投げています。
 球の出所が云々というのは、気にしない方が良いと思います。それは最後の手段です。体の開きを抑えるには、最初から背中を捕手の方へ向けておき、ストライドを小さめにすれば問題はないでしょう。
 腕の角度が地面と平行から少しスリークウォーター気味であるならば、ストライドは両足が同時に地面に接している時間が持てる、小さめの方が、上体の横回転を、バッティング、あるいはテニスのオープンスタンスのように、効率的に行えます。
 腕の角度がスリークウォーターからさらに地面に垂直に近い角度、例えば、ドジャースのクレイトン・カーショーのようであれば、重力を利用して上体の縦回転が主体のピッチングにするために、ストライドを少し大きめにするのが普通です。この場合も、上述したように、オーバーハンドがサイドハンドの延長であるという、肩関節の内旋、肘関節の伸展を意識的に行わない投げ方をすれば、例え体が開いていても力強い投球が可能です。
 その際、体の重心が前足の上を通過するようにしないといけません。
 これは別に、新しい投げ方ではなく、大リーグの歴史上すでに100年前から、通算300勝以上残した伝説的な投手が行ってきた方法です。ちなみに、大リーグでは最初はアンダーハンド、それからサイドハンドであり、オーバーハンドが許可されたのはナショナルリーグでは1884年からです。ナショナルリーグができたのは1876年、アメリカンリーグは1901年にできました。アンダーハンド、サイドハンド、オーバーハンドも基本的には同じ投げ方であり、どの投げ方もマスターすると、個性的な自分に合ったいろいろな投げ方が出来るようになると思います。
Posted by HANG IN THERE YU(管理人) at 2016年04月29日 20:22
僕は逆Wの投げ方です。
ですが、今も大学でやっています。
中学、高校とほとんど1人で投げてきましたが、大きな怪我もありません。
ここでは、怪我をした選手を取り上げているだけで、怪我せずに投げれている選手もたくさんいると思います。
Posted by (。-_-。) at 2016年06月03日 12:23
大谷投手の投げ方は どう思われますか?
インバーティッド・ダブルが入ってるような気がします。
将来 メジャーに行った時が 心配です。
Posted by at 2016年06月16日 20:58
ここはプロでプレーしている選手を扱っているから、アマチュアレベルで怪我していないことは関係ないと思うよ。というより、アマチュアでしかやってないのにこのサイトの内容にケチをつけるのは馬鹿でしょう。

プロで通用するだけの身体能力を持ち、それを最大限発揮して投球しているから、ここに取り上げられた投球モーションが現れると怪我する可能性が高い、もしくは実際に怪我をするのであって、常に最大近いパフォーマンスを発揮しなくて打たれても生活に困るわけでもなく、いくらでも手を抜ける環境にあるアマチュア選手と同列に話そうとするのは愚かとしか言い様がない。
Posted by at 2016年06月18日 18:46
〜なはずってだけで、必ずそうなるってわけではないからね。ほど〜って表現もしかり
Posted by at 2017年03月28日 22:00
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