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2013年05月31日

2013年度、大リーグで活躍が目覚しい若手投手

 今年の大リーグは若手投手の活躍が目立っています。成績表をみると、26歳以下の投手が成績上位を占めています。

 その中で将来性を含めて注目すべき投手を2人挙げてみましょう。

 昨年から注目されていた選手はニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt Harvey(24歳)です。今年のサイヤング賞候補の一人といっても言い過ぎではないと思います。今年はダルビッシュ投手と同じく1安打ピッチング(完全試合にあと少し)も記録しています。

 5月25日現在、5勝0敗、防御率1.93、被打率.169、WHIP 0.83

 ニューヨーク・メッツは打線が弱く(大リーグ30球団中下から2番目.227、最下位はマイアミ・マーリンズ.221)勝ち星が伸びませんが、被打率、WHIP(1イニングで平均、何人、安打、または四球で塁に走者を出したか)はクレイトン・カーショーについで2位です。
 クレイトン・カーショーは防御率もトップの1.35で、大リーグ通算防御率も2.69と先発投手としては大リーグ史上に名が残る選手です。同じドジャースで活躍した伝説の左腕投手サンディー・コーファックスの2.761を上回っています。

 マット・ハービーの将来性を感じさせるのがまず球速です。
 マット・ハービーの平均球速は94.8マイルで先発投手としては3位タイです。
 1位はワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグStephen Strasburgの95.4マイルです。
 2位はシカゴ・カブスのジェフ・ザマージャJeff Samardzijaの95.0マイルです。
 
 マット・ハービーがすごいのは速球だけではありません。スライダー、カーブ、チェンジアップといった変化球も平均以上のできです。
 マット・ハービーは投球フォームも優れています。緩やかなフォームからボールを投げていて、フォームからは球速は感じさせませんが、上記のように球速があります。肘、肩に負担がかからない投球フォームだと言えます。腕を背中側に大きく引かないで、肘もあまり曲げない投げ方をしています。
 腕の振りが非常に速く見える投手は怪我をしやすい投げ方をしていると言えます。下半身をうまく使っておらず、肩、肘の動きだけが目立つので、腕の振りが体に比べて相対的に速く見えるからです。

 マット・ハービーの1安打ピッチング(動画)

Must C: Classic05/07/1302:08
5/7/13: Matt Harvey overcame a bloody nose to throw 6 2/3 perfect frames and finish the game with a career-high 12 strikeouts
マット・ハービーは鼻血にもめげずに6回2/3イニングをパーフェクトに抑え、自己最多の12三振で完封しました
matt harvey one hitter 2013.gif

Updating the Top 100 Pitchers in Baseball in 2013
2013年度、大リーグトップ100投手(更新)
BY JOEL REUTER (FEATURED COLUMNIST) ON MAY 22, 2013
 
6. SP Matt Harvey, New York Mets
6位 マット・ハービー、ニューヨーク・メッツ
I may be jumping the gun a bit here by putting Matt Harvey at No. 6, but I see no reason to believe he's not the real deal and every bit as good as his numbers indicate, even at 24 years old.
マット・ハービーを6位にランクしたことは少し早まった行為(フライング)かもしれません。しかし、まだ24歳ではあるけれど、彼の成績が示す通りどこからみてもすばらしく、本物でないと信じる理由はどこにもみあたりません。

The right-hander made 10 starts for the Mets down the stretch last season, going 3-5 with a 2.73 ERA and 10.6 K/9. Jon Niese got the Opening Day nod, but it was clear that Harvey had the talent to be the ace of the staff.
この右腕は昨シーズン終盤にメッツで10試合に登板し、3勝5敗、防御率2.73、奪三振率10.6/9回という成績を残しました。ジョン・ニースが開幕日に登板しましたが、ハービーがチームのエースとなる才能を持っていることは明らかでした。

With a fastball that consistently sits in the high 90s and a filthy slider, he has overpowering stuff, and he's used it to go 5-0 with a 1.93 ERA and 9.5 K/9 through his first nine starts this season. There will no doubt be some drop in those numbers as the season progresses, but there's no reason to think that he's not a legitimate Cy Young candidate in 2013.
彼にはコンスタントに90マイル後半を出す速球と厄介なスライダーがあり、打者を圧倒する力があります。このおかげで、彼は今シーズン最初の9度の先発で5勝0敗、防御率1.93、奪三振率9.5/9回という成績を残しています。シーズンが進めば、この数字がある程度落ちるのは間違いありませんが、彼が2013年度のサイヤング賞候補にふさわしくないと考える理由はどこにも見当たりません。


もう一人の注目の若手投手パトリック・コルビンPatrick Corbin

アリゾナ・ダイアモンドバックスの若手左腕投手(23歳)で5月30日現在の成績は、
8勝0敗、防御率1.71、奪三振率7.4、四球率2.6とナショナルリーグのサイヤング賞を取りそうな勢いがあります。
 コルビンの球種は4つで、投球比率は速球がツーシーム50.2%、フォーシーム19.2%、変化球がスライダー19.2%、チェンジアップ9.4%です。
 コルビンの投球パターンはツーシームでゴロを打たすか、カウントを稼ぎ、2ストライクに追い込むとスライダーで三振を狙いにいくと言って良いでしょう。
 コルビンのスライダーの空振り奪取率は28.2%(100球投げたら28球で空振り)、スウィングした場合その53%で空振りを奪っています。初球ストライク率は70.2%と高くヤンキースのフィル・ヒューズPhil Hughesの70.8%についで第2位です。
 
 パトリック・コルビンは昨シーズンは6勝8敗、防御率4.54でした。今シーズンはローテーションの5番手として投げていて、それほどの期待はされていませんでしたが、今年、大ブレークの様相です。

 コルビンの大ブレークの要因

@速球の球速が91.3マイルと昨年よりも1マイルほど速くなった。
➁初球ストライク率が58.6%から今年は70.2%と上昇している。
B速球の比率はほとんど変わっていないが、ツーシームの占める比率が38.9%から50.2%と上昇した。
 その結果、ストライクゾーンに投げてゴロを打たすか、ファウルでカウントを稼ぐことが出来るようになっ た。 
Cスライダーの比率が16.4%から21.9%と上昇した。その分チェンジアップの比率が下がった。
Dホームランを打たれる比率が1.18から0.40と大幅に減少して防御率が大幅に改善した。

コルビンの初完投勝利(動画)
Corbin's first complete game 05/21/13 | 00:01:56
5/20/13: Patrick Corbin strikes out 10 vs. the Rockies in the first double-digit strikeout and complete game of his career
パトリック・コルビンはロッキーズ戦で10三振を奪い、初完投勝利を挙げる。2桁三振は初めてです。

コルビンのスライダー
patrick corbin 2013 cl game.gif


Updating the Top 100 Pitchers in Baseball in 2013
2013年度、大リーグトップ100投手(更新)

21. SP Patrick Corbin, Arizona Diamondbacks
21位 パトリック・コルビン、アリゾナ・ダイアモンドバックス
By far the biggest surprise of any of the 2013 breakout stars, Patrick Corbin gave no indication prior to the season that he was in line for a monster year and was not even expected to break camp in the Diamondbacks rotation.
2013年にブレイクした選手の中では断然パトリック・コルビンが最大の驚きです。彼はシーズン前は、今年が大飛躍の年になるという兆候は見せていませんでした。そしてダイアモンドバックスの(春季)キャンプを離れダイアモンドバックスのローテンションに入ることさえ期待されていませんでした。

In 2011, Corbin went 9-8 with a 4.21 ERA in a full season at Double-A, and while he was one of the Diamondbacks' better pitching prospects, he was never anywhere near any Top 100 lists.
2011年にコルビンは2Aでフルシーズン投げ、9勝8敗、防御率4.21でした。そして、ダイヤモンドバックスでは将来有望な投手の一人ではありましたが、トップ100のリストに載るような位置にいることは決してなかったのです。

He split last season between the minors and Arizona, going 6-8 with a 4.54 ERA in 22 games (17 starts) for the Diamondbacks and entered camp competing with top pitching prospect Tyler Skaggs for the No. 5 starter spot.
彼は昨シーズンはマイナーとアリゾナを行ったり来たりでした。ダイアモンドバックスでは22試合(先発が17回)投げて6勝8敗、防御率4.54でした。そしてローテーションの5番目の座を最も有望な投手の1人であるタイラー・スカッグスと春季キャンプで競いました。

He came away with the job, and in nine starts so far this season, the left-hander is 7-0 with a 1.44 ERA and 51 strikeouts in 62.1 innings. His 273 ERA+ is the best mark in the NL, and he has gone at least six innings and allowed no more than two runs in each of his starts.
彼は(先発の)仕事を得てキャンプを離れました。今シーズンこれまで9度先発して、7勝0敗、防御率1.44、62.1イニングで51三振を奪いました。彼の修正防御率(球場の広さで補正した防御率で100が平均値)273はナショナルリーグで最高です。そして彼は少なくとも6イニングを投げ、いずれの先発でも2点以上を許しませんでした。

He seems like the most likely to regress of any of the fast-climbers on this list, so I'm not willing to rank him any higher just yet, but he has earned his place in the Top 25 so far this season.
彼はこのリストに急遽載った選手の内では最も成績が後退しそうに思えます。だから、私はまだ彼をもっとランクの上位に乗せる気にはなっていません。しかし、今シーズン彼はこれ迄のところトップ25位に着けています。
posted by HANG IN THERE YU at 19:47 | Comment(2) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
レイバックについて質問させていただいた者です。

詳細なご回答ありがとうございました。大変参考になりました。

自分は15年以上前に「科学する野球」という本を読みまして、メジャーのトップクラスの投手が身体能力だけではなく、科学的に理にかなったフォームで投げているということに感銘を受けて(実力には結びつきませんでしたが・・・)、自分なりに興味をもっていました。カール・ハッベルや、金田正一などのレジェンドクラスは主様の仰る通りのフォームをしていると感じました。
レイバックに関しては、速球ということにしぼれば必要であり、ただその作り方が問題。早めにレイバックの状態を作るというイメージで良いでしょうか?駄文長文お許しください。
Posted by at 2013年05月27日 22:45
 レイバックの状態を作るタイミングについての質門について 

 レイバックとは肘から手首にかけての部分が肘よりも後に倒れることです。
 投球動作は体の下の部分から始まります。軸足の蹴りから始まり、体の動きが足から手へと上に向かって伝わっていくので、どうしても手に近いほど動きに遅れが生じます。
 遅れは、特に関節の部分で起きます。腰の部分には関節はないのですが、骨もないのでこの部分でも遅れは生じます。
 肩関節、肘関節も同様です。

 体に負担をかけずに、投げる効率の良い投球方法とは、強度的に劣る肩甲骨、肩関節、肘関節を極力使わないで、それよりも強度のある下半身の関節、股関節、膝関節、足関節、足趾(足の指の関節)を主に使って投げることです。下半身とともに、肩甲骨、肩関節、肘関節も使った方が球速はさらに上昇しますが、球速と怪我の危険性を考えれば、極力肩、肘は使わない(トルクをかけない、受動的に回転するのはかまわない)方が良いと思います。

 大リーグでも昔の投球フォームは、肘をあまり曲げずに、また腕は肩で引っ張って運動エネルギーを与えてから、腕を回転させていたので、肩にも大きなトルク(回転モーメント)はかかっていないように思えます。
 肘、肩の故障を防ぐには、前足を着地したときに、投球側の前腕は地面に垂直で、肘の高さは両肩を結んだ線よりも下にあるのが、前腕の遅れ(慣性のため2塁方向に置き去りになり後傾すること)を防ぐために大事なポイントです。

 昔の投手の場合、テイクバックで前腕は地面に垂直というよりも肘がわずかに曲がったまま、そのまま投球して怪我もせず、250勝近く挙げた選手もいます。ボブ・フェラー266勝、フアン・マリシャル243勝等。
 比較的最近の選手では311勝を挙げた元ニューヨーク・メッツのトム・シーバー、354勝を挙げたロジャー・クレメンス、現役の選手では今、最も注目されているサイヤング賞候補のニューヨーク・メッツのマット・ハービーがいます。
 これらの投手は肘をあまり曲げずに速い球を投げ故障もしませんでした。マット・ハービーは現役ですが、まだそういう話は聞いたことがありません。

 腕の遅れレイバックもこの選手たちにはみられません。肘は曲げないので当然ですが、腕も体の後ろ側にほとんど引いていないので、上腕のレイバックもありません。

 遠回りをしてしまいましたが、ご指摘の通り、レイバックは早めに作る方が良いということです。肘は曲げる限り、多かれ少なかれ必ずレイバックは起きます。

 テイクバックで肘を両肩よりも高く挙げ、なおかつ肘を背中側に大きく引くと、レイバック(前腕の遅れ)も大きくなり、かつ遅いタイミングで起きます(体が正面を向いた状態で)。その結果、肘、肩の故障につながります。
 レイバックが大きくなるもうひとつの要因は、投球側の肩が素早くかつ円軌道を描かないことも挙げられます。
 ストラスバーグ投手を始め、トミー・ジョン手術を受けた投手の投球側の肩を見ると、ホームプレートに向けて直線的に動いています。そのため、肘も直線的な動きとなり、曲がった肘を伸ばすような遠心力が働きません。そのため、レイバックは大きくなります。

 つまり、骨盤は軸足の蹴り初めから積極的に回転させていった方が良いということです。

 怪我をしない投手は昔も今も骨盤が最初から回っています。

 胴体は足を着くまで回転させない方が良いという話を聞くことがありますが、これは誤解を招く表現だと思います。

 胴体が回転して悪いのは、無駄な緩い回転をして前足を着地する前に、肩、肘をっ使って手投げをした場合の話です。

 球が速くて、怪我をしない投手は、軸足の蹴り初めから骨盤を積極的に力強く回転させています。その結果、前足を着地したときにはもうすでに十分肩は円軌道を描いて十分な速度に達しています。そして、前足を着地してからさらに肩は加速させています。

 カブスの藤川投手はトミー・ジョン手術を受けることになりましたが、懸念されたことが起きてしまって残念です。

 藤川投手のテイクバックでの肘の位置は両肩を結ぶ線よりも高かったので心配していましたが、現実のものとなり、やはり投球フォームに問題があったと言えます。阪神時代から時々、前腕の張りがあったそうで、肘の内側側副靭帯もすでにかなり損傷していたことが推測されます。大リーグのキャンプでも前腕の張りがあったそうで、そのせいもあって大リーグでの成績もあまり良い結果が出なかったのでしょう。
Posted by sh at 2013年06月02日 23:10
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