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2013年05月23日

腕の遅れと故障(中日、吉見一起投手の投球フォーム)

 中日ドラゴンズの吉見一起投手が右肘を故障し、内側側副靭帯再建術(トミー・ジョン手術)をするそうです。吉見一起投手は今回で3度目の手術になるそうです。吉見一起投手は昨年は右肘頭骨棘を骨折しており、それ以外にも肘、肩の故障を過去何度も経験しているようです。

 中日の投手には故障で選手生命を短くした人が過去にもいます。初先発でノーヒット・ノーランという快挙を達成した近藤真市投手、また中日ドラゴンズ史上最高の左腕、今中慎二投手もそうです。

 この3人に共通している投球フォーム上の問題点は腕が遅れて出てくることです

 具体的にはテイクバックで肘を背中側に大きく引き過ぎ、なおかつ肘を高く上げ過ぎている点です。前足を着地した段階でもまだ、肘が背中の後にあるために、肘を球速に前に出す必要があり、そのため前腕が遅れて出てきます。これは前腕には質量があり慣性(同じ速度を保つ性質)があるためです。

 こういう投げは良く言えば、腕がムチのようにしなるような投げ方と言えますが、肩、肘に大きな負荷がかかる投げ方でいずれ故障する危険性があります。

 近藤投手は2年目に肩の手術、4年目に肘の手術(トミー・ジョン手術)をしており、活躍できたのは2年間だけでした。
 今中投手は中日球団史上最高の左腕投手でしたが肩の故障に泣き、30歳という若さで引退しています。

吉見一起投手の投球フォーム
yoshimi kazuki inverted w.jpg
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近藤真市投手の投球フォーム、初先発でノーヒット・ノーラン
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今中慎二投手の投球フォーム
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http://kitchensink11.seesaa.net/auth/article_preview/

大リーグでトミー・ジョン手術を行なった投手の共通の投球フォーム上の形、逆W(inverted W)
両腕がWを逆さにした形になっている。肘をムチのように使う投球フォームになってしまい、肘の故障につながります。前足を着地した際に逆Wになっていると非常に危険です。
inverted W.jpg


理想的な肘の使い方(背中側に引かない、高く上げない)
ニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt Harvey
現在、大リーグで注目の投手(24歳)、メッツではトム・シーバー以来のエースと言われている。
緩やかなフォームから平均球速95マイルの球を投げる。
肘、肩を故障しにくい投球フォームで球速もあり、注目の投球フォームです
 


大リーグで300勝以上挙げるための投球フォーム上の秘密
(肩、肘に負担がかかっていない)
肩、肘を使って投げない

具体的には

@テイクバック(意識としては腕を下げるだけ)で、肘を背中側に大きく引かない、肘を高く上げない

A両肩と右肘が一直線上にくる姿勢のまま、腕を振らない(何もしない)

B下半身(股関節よりも下の部分だけ)だけを使う

 Aの姿勢を保ったまま、上半身は何もしないで、下半身だけを使って右肩が円軌道(直線的な動きはだめ)を描くように、スムースに加速させる。上半身は前足を着地した際、腹筋を使って上半身を前に倒すだけ。

 直線的な動きだと腕が前に出て行かない。

 円軌道だと遠心力で腕がひとりでに前に回転してゆく。

肩が円軌道を描くと回転ブランコのように腕はひとりでに回転するイメージ
ウィーンの回転ブランコ

Prater Turm 117m Wien.gif


イメージで投球方法を表現すると

右肩をスムースに円軌道をイメージしながらホームプレート方向に投げ出す(チャップマン投手の場合で言うと、キューバのミサイルのイメージ)

 投げ出したいのは右肩だけです。体の左側は必要ありません。

 右肩が素早く回転してさえゆけば、肩より下の姿勢はどうあろうと関係ありません。それは人それぞれの投球スタイルで違ってきます。体が開くとか開かないとかも関係ありません。極端な話、前足を着地しないでジャンプしたままでも問題ありません。ただ、前足を着地したほうがさらに右肩が加速するのでそうするだけの話です。上原投手は前足をほんの一瞬着地する程度です。ジャンプして投げている感じです。また、ニューヨークヤンキースのショートストップ、デレク・ジーター選手は三遊間の球を捕球した後、ジャンピングスローすることで有名です。右肩さえ回って行けば空中でも強い投球は可能です。また、バレーボールのジャンピングサーブも同様です。

 前足を着地する際は、体の左側が完全に止まるようにしなければいけません。

 イメージ的には左の股関節を2塁方向に逆戻りさせる意識を持つことが大事です。それで左の股関節がちょうど止まるようになるはずです。

トム・シーバーTom Seaver (1967-1988)
身長 6' 1" =約185.4 cm
体重 206 lb =約93.4 kg
大リーグ通算311勝205敗、防御率2.86の剛球投手
サイヤング賞3度受賞、ノーヒット・ノーラン1回。
tom seaver slow.gif
tom seaver super slow.gif

ドン・サットンDon Sutton(1966-1988)
身長 6' 1" =約185.4 cm
体重 185 lb =約83.9 kg
大リーグ通算324勝256敗、防御率3.26
23年間の大リーグ歴のうち21回で10勝以上の成績を残しました。また、故障者リストに載ったことがありません。
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posted by HANG IN THERE YU at 07:44 | Comment(2) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも大変興味深く背景させていただいております。また大変参考になります。

レイバックが故障の一つの要因とありますが、アメリカの速球派投手のフォームをみるとレイバックが多いように思います。ウォルター・ジョンソンですらレイバックしてるように見えます。メジャートップクラスの速球を投げることと、故障しないフォームは両立させづらいのでしょうかね?
Posted by at 2013年05月26日 21:29
 レイバックと故障についてのご質問をいただきました。

 レイバックで問題になるのは、前腕がただ後に倒れていることではなく、前腕が急激に後に倒れることが問題です。
 テイクバックで肘を曲げれば前腕の慣性(質量があるため)のため誰でも前腕は後に倒れます。この倒れる速度が急激に起こるような投げ方が問題となります。


 サイドハンドスローのウォルター・ジョンソン投手も例外ではなく、少し前腕が後ろに倒れていますが(後に遅れる)、急激に倒れていませんので、怪我をしなかったのでしょう。

 テクバックで肘をまったく曲げないで、伸ばしたまま投げれば肘の故障はないでしょう。
 実際にそのような投げ方をしている投手が大リーグにいます。
 サンフランシスコ・ジャイアンツの左腕マジソン・バンガーナーMadison Bumgarner投手(23歳)です。今シーズンは4勝2敗、防御率2.89、通算で40勝32敗(5月26日現在)と立派な成績を残しています。

 フォーシームの平均球速は90.6マイルですから球速はそれほどでもありません。スライダーを一番多く投げています。

 肘を伸ばしたままでは、上体が回転し始める際、急激に回転させると腕の慣性のため、肩に無理な力がかかる恐れがあります。

 肩で腕を引っ張るようにして腕が前に動き始めてから上体を回転させ始めないと肩に無理なトルクがかかってしまいます。野球のバットを振るときはそうなっています。

 このように肩で腕を引っ張るようにすることは、肩にトルク(回転させる力)をかけないで腕に運動量を与えることができるので、速い球を怪我をせずに投げるためにとても大事な点です。
 投げ始めに急激な動作をすると怪我につながります。ボールをリリースした後、動きを急激に止めるのも同様です。
 それでフォロースルーを大きく取ることも大事になります。

 最近、投球フォームと故障との関係に関するアメリカの記事を読み、自分で考えていたことと一致していたのでご紹介します。

 典型的な内野手の投球フォームと典型的な外野手の投球フォームのどちらに近い投球フォームにするかで、投手の故障率に大きな差があるということです。

 内野手型の投球フォームの故障の比率は70%、一方、外野手型では20%に過ぎないということです。

 内野手はボールを取って、素早いモーションで送球しなければいけませんので、肩を開き、肩、肘を背中側に大きく引いて、肩、肘の動きを主体に投げます。肘は90度曲がり、肘を中心に前腕が素早く回転します。

 ちょうど、ストラスバーグ投手のような投げ方になってしまいます。

 テイクバックで肩甲骨を後に大きく引き、肘を高く上げる姿勢をすると、球速は出ますが、その分、肩、肘に大きな負荷がかかってしまいます。アメリカではこのようなフォームをインバーティッド・ダブル(逆w)と言って、良くないとしばしば指摘されています。
 ストラスバーグ投手は投球フォームを変えるつもりはないと言っており、このままではまたトミー・ジョン手術が必要になってしまいそうで心配です。

 少し前までは、球速を出すためにこのようなフォームがもてはやされたようです。有名な投手コーチがこのようなフォームを顧客に推奨して、流行したようです。このようなフォームを欠点を知らずに真似ているのか、たまたまそうなったのか知りませんが、今でも多くこのようなフォームを見かけます。
 大リーグでは9人に1人とも7人に1人がトミー・ジョン手術を受けているようです。


 内野手型をショートアーム型と呼んでいます。

 一方、外野手型の送球では肘はあまり曲げません。曲げた肘も素早く伸ばして投げます。
 外野手型は大きなゆったりしたモーションから腕を伸ばして、体重を利用して投げるのでボールにスピードと長い距離が得られます。無理な力が肩、肘にかかりません。

 外野手型をロングアーム型と呼んでいます。

 ロングアーム型ではボールの左右のコントロールも優れています。肩が地面と垂直な弧を描くからです。

 昔多くの投手が行なっていたハイキック投法(前足を高く上げる投げ方)がその典型です。
 ハイキック投法では肘を背中側に大きく引かず、テイクバックで肘も軽く曲げる程度で、肘をすぐに伸ばすようにして軸足を強く蹴り、腕と上体を一体化させ大きな腕のようにしてスウィングする投げ方と言えます。
 
 ハイキック投法の代表フアン・マリシャル投手はコントロールが良く四球率は1.8/9回と驚くような数字を残しています。

 ハイキック投法ではスピード、コントロール、故障しにくいという長所が揃っているのに最近はあまりみかけなくなってしまいました。盗塁をされやすいという欠点と少し体力を消耗しそうな点がその理由でしょうか。

 しかし、ハイキック投法を含む外野手型の投球フォームを基本にすれば、球速と怪我をしない投げ方というのは両立できると思います。
 軸足の股関節を十分に曲げ、これを素早く伸ばす動作が球速を生む最大のポイントであると最近感じています。
 
 その際、股関節よりも上の部分に力を入れない(腰も大きく捻らない)で、肩、肘にも力をいれず、右股関節を中心に上体を回転させ、前足を着地したら、次に左股関節を中心に上体を回転させることが大事です。(右投手の場合)
Posted by sh at 2013年05月27日 02:46
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