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2013年06月22日

怪我をしやすい投球フォーム

 怪我をしないために守るべきポイント

前足着地時の正しいコッキングの位置

 オーバーハンド、スリークォーターの場合
 投球動作(コッキングの段階)で前足を着地したとき、投球側の前腕が垂直に立っていて、上体は開いていない(両肩を結ぶ線がホームプレートの方向を向いている)、投球側の肘の高さは両肩を結んだ線よりも高くならない。

 これは、怪我をせずに長い間活躍している選手の特徴です。

 では、このような投球フォームをしている選手を見てみましょう。

ニューヨーク・ヤンキースのマリアーノ・リベラMariano Rivera(43歳)
身長  6' 2" =約188 cm
体重 195 lb =約88.5 kg
通算629セーブ(大リーグ記録)、奪三振率8.3/9回、四球率2.0/9回
前足着地時のコッキングの位置
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フィラデルフィア・フィリーズのクリフ・リーCliff Lee(34歳)
身長 6' 3" =約190.5 cm
体重 205 lb =約93 kg
通算132勝80敗、奪三振率7.5/9回、四球率2.0/9回
肩、肘に大きな怪我はしたことがない。2008年アメリカンリーグのサイヤング賞受賞
前足着地時のコッキングの位置
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トロント・ブルージェイズのマーク・バーリーMark Buehrle(34歳)
身長 6' 2" =約188 cm
体重 230 lb =約104.3 kg
通算176勝136敗、奪三振率5.1/9回、四球率2.0/9回
球速は遅く速球で89マイルしかないが、制球が良く、怪我にも強く、2012年までに12年連続で2桁勝利、12年連続で200イニング以上投球している。
2007年ノーヒット・ノーラン達成。2009年完全試合達成。
前足着地時のコッキングの位置
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 3人に共通なのはテイクバックで肘を両肩を結ぶ線よりも高く上げず、かつ背中側に大きく引かないで、一度肘を伸ばすようにして素直に前腕を垂直に立てている点です。
 そのため肩、肘に大きなストレスがかかっていません。

怪我をしない投球フォームはコントロールも良い

 3人ともコントロールが良く、偶然にも3人の四球率/9回は2.0と低く、まったく同じだというのは注目に値します。

怪我をしないテイクバックの形

肘は一度まっすぐ伸ばすか、軽く曲げる程度にして、それから前腕を立てる(コッキングのトップ)
昔の投手はこの形が多かったように思います。大リーグでは現在でもこの形の投手は多くいます。日本では少なくなったようです。この形は物理的にも人体の解剖学的にも球速は出るし、怪我も少ないと思います。

マリアーノ・リベラのテイクバック
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クリフ・リーのテイクバック
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3人のコッキングのトップ(前腕を垂直に立てた状態)での肘の位置
 両肩を結んだ線よりも低い位置にあります。

大リーグ300勝投手のトップの肘の高さ
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 大リーグで怪我もなく長く投げて活躍した投手は同じくトップでの肘の位置は両肩を結んだ線よりも低くなっています。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソン、トム・シーバー、グレッグ・マダックスといった300勝以上を挙げた大投手はみんなそうです。
 みんな骨盤を回転させる投げ方をしているので、やがて肘の位置は遠心力で自然と両肩を結んだ線上に来て一直線に並ぶので問題はありません。

トップで肘の位置は高くしなければいけないという本当の意味

 これは紛らわしい表現で、上に上げた300勝投手たちと逆のことを言っています。すべての投球フォームでトップを高くすることは当てはまりません。逆に怪我につながる危険性があります。特に肘を高くして、背中側に大きく引いてしまうと肘、肩の怪我につながります。

 トップで肘の位置は高くしなければいけないという意味を自分なりに考えてみると、前腕を立てて肘を使い、上体の軸を傾けずに投げる場合にのみ当てはまる表現ではないかと思っています。ソフトバンクの摂津投手のような投げ方に言える表現だと思います。昔の投手では江川卓投手でしょうか。

ソフトバンク摂津投手のトップの肘の高さ
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 摂津投手はトップでの肘の位置が両肩よりも高くなっていますが、肘を背中側には大きく引いていません。
この投げ方で肘が下がってしまったら、下半身が使えず手投げになってしまいます。右投手の場合、肘を下げると重心の位置が3塁側にずれてしまい、前足を着地した際に左の股関節の位置が静止せず、体全体が3塁側に流れてしまい右肩の縦回転の速度も上がらず、肩、肘に大きな力を入れないと球速が上がらないためではないかと思っています。

怪我をしないために守るべきポイントが守られなくなる投球フォーム上の腕の形(テイクバックの形)

@inverted W(インバーティッド・ダブル、逆W)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Wをひっくり返した形になっている。
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inverted Wに関する記事はクリス・オリアリー氏のホームページChrisOLeary.comに詳しく解説が載っています。

THE INVERTED W DEFINED
Inverted W(逆W)の定義


I define the Inverted W as being more than 90 degrees of shoulder abduction with the Pitching Arm Side (PAS) elbow above the level of the shoulders (aka hyperabduction) combined with 5 or more degrees of shoulder horizontal adduction (PAS elbow behind the shoulders).
Inverted W(逆W)は肩が90度以上外転(腕を真下に下げた上体から腕を水平以上に上げること)して、投球側の腕の肘が肩の高さよりも高くなり(過外転とも言われる)、さらに肩は5度以上水平内転(投球側の腕の肘が肩よりも後にくること)すること

inverted Wはステファン・ストラスバーグ投手の投球イニング制限に関する話題ですっかり有名になったようです。最近ではセントルイス・カージナルスのアダム・ウェインライト投手が2009年、2010年にそれぞれ19勝、20勝を挙げたあと、2011年に肘の内側側副じん帯が断裂してトミー・ジョン手術を受けたこともinverted Wに関心が集まる理由です。アダム・ウェインライト投手は2013シーズン好調で9勝3敗(6月8日現在)の成績です。

inverted Wはピッチングコーチのポール・ナイマンPaul Nyman氏が大リーグに広めたようです。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソンを指導した投手コーチのトム・ハウス氏もinverted Wの普及にかかわったようです。南カリフォルニア大学でも最近まで指導していたそうです。

ステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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断裂が起こる肘の内側側副靱帯の場所(前束)、右肘を体の内から外に向かって見た図
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inverted Wの問題点
 上のストラスバーグの連続写真に見られるように、前足を着地してから肘を急激に前に加速して押し出すので、前腕が急激に後に倒れる(lay back)。lay backの角度も大きくなり、肘の内側(小指側)の内側側副靭帯に急激に引っ張り応力がかかってしまう。繰り返し応力がかかることにより、靭帯の微小断裂が積み重なって行き、ある時点で靭帯断劽が起こり得ます。靭帯が断劽するときにはプチッという音(英語ではpop)が聞こえるそうです。

 上腕の動きを見ると、右肘を両肩を結んだ線よりも高く上げるので、このときに内旋が起き、続けて外旋(意識的に行なう能動的な動きと、慣性【前腕は同じ速度を維持しようとするが、肘は前腕よりも加速して前に進むため】による受動的な動きが重なる)が起き、lay back(前腕の遅れ)が最大になる。このとき、外旋も最大となる。これから、前腕は前に倒れて行く(内旋が始まる)。

 つまり、上腕には内旋、外旋、内旋という動きが順番に起きます。上腕の動き(回転角度の動く範囲)は大きくなるので、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れてしまいます。ストラスバーグ投手が前足を着地して、ボールを投げる側の前腕が垂直になった時の上体の向きをみると、ホームプレートの方向を向いています(体が開いてている、左肩の開きが早い)。また、内旋、外旋、内旋という動きが急速に行なわれるので(大きな加速度が生じる)、肩にも大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wの腕のフォームを作ってしまうと、下半身を使い、肩、肘に力を入れないで投げたとしても、大きなlay backが起こり、肩、肘には大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wは肩、肘の強度が、十分にあれば効率的な投げ方と言えます。内野手とか投球数が少ない場合には、クイックで投げれて有効ですが、投手の場合、球速も速く、球数も多いので長期的な健康を考えた場合には問題があると言えるでしょう。

 ストラスバーグ投手のように、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れる度合いが大きい投手ほど、肩、肘に故障が出てくる時期は早まります。
 

アダム・ウェインライトの投球フォーム
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トミージョン手術を受けることになった藤川球児投手のカブスでの投球フォーム
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元ヤクルトスワローズ伊藤 智仁投手、150キロを超える速球と高速スライダーで強い印象を残したが、肘、肩の故障に悩まされ若くして引退(31歳で)。3度肩の手術を受けた。肘痛、ルーズショルダー(非外傷性肩関節不安定症)に悩まされ、デビューした翌年から2年間は一軍での登板はなかった。
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Inverted W(逆W)のフォームを作ると、肩関節を覆う関節包という繊維状の軟部組織の下部に無理な引っ張り応力がかかり、肩関節が緩くなりやすいそうです。肩の脱臼と同じ部分が損傷を受けるそうです。伊藤投手は3度目の手術の後、投球中に亜脱臼を起こしています。33歳の誕生日の前日に引退を表明。

元中日ドラゴンズのストッパー、最速157キロを投げた与田剛投手、肩、肘の故障で活躍できたのは数年間であった。
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inverted Wのフォームのため下半身が有効に使えていません。コッキング動作で右前腕が垂直になったとき(トップの位置)で上体が完全にホームプレートの方向を向いていて、腕だけで投げているために、肩、肘に大きなストレスがかかっています。

日本ハム武田 久投手、2013年6月2日右肘痛のため登録抹消された。
テイクバックで右肘が両肩よりも高くなり過ぎており、肘を痛めやすい投球フォームです。
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西崎幸広投手、日本ハム、西武に在籍していた。デビューして3年間は46勝を挙げ華々しい活躍をしたが、その後は安定した活躍は出来なかった。15年間で通算127勝102敗、22セーブ、防御率3.25の成績を残しました。近鉄の阿波野投手と新人王を争い、僅差で賞を逃してしまいましたが、通算勝利数では50勝近く上回っています。
 投球フォームを見直してみると、Inverted W(逆W)のテイクバックをしており、これが肩、肘に悪影響を与えたのではないかと思われます。
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Ainverted L(インバーティッド・エル、逆L)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Lをひっくり返した形になっている。
inverted Lの定義:肘が両肩を結ぶ高さまで上がり、かつ肘が背中側に5度以上引かれている。
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2013年にトミー・ジョン手術を受けた吉見一起投手(中日ドラゴンズ)の投球フォーム
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テイクバックでinverted L(逆L)の形をつくると、inverted W(逆W)と同様、コッキング(前腕を立てる)動作のタイミングが遅れてしまい、肘、肩に大きなストレスがかかりやすくなります。
 前足を着地したときに、前腕がまだ垂直(地面に対して)になっておらず、前腕が垂直になったときには肩が開きすぎ、上体がホームプレートの方向を向いています(ストラスバーグ投手と同様)。

元中日ドラゴンズの左腕エース今中慎二投手、肩の故障のため30歳という若さで引退しています。
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ソフトバンク斉藤和巳投手、79勝23敗という脅威的な勝率を残している。右肩痛で3度の右肩腱板の手術をしている。まだ、現役は引退しておらず、コーチ契約中で、まだ現役へ復帰の可能性は0ではないようです。
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inverted L(逆L)のフォームをしている大リーグの現役200勝投手、ティム・ハドソン(37歳)
2013年6月14日現在、通算201勝110敗、通算防御率3.45、奪三振率6.06/9回、四球率2.70/9回
2008年8月にトミー・ジョン手術を受けました。
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Binverted V(インバーティッド・ブイ、逆V)

投球側の腕の形はinverted Wと同じだが、グラブ側の腕の肘は通常のフォームのように肩よりも高く上がっていません。

八木智哉投手、元日本ハム、現在オリックス・バファローズ在籍
日本ハム1年目は12勝を挙げ、パリーグ新人王に輝いたが、その後は肩痛に悩まされている。
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阿波野秀幸投手、近鉄、巨人に在籍していた。近鉄で15勝を挙げ、新人賞を獲得。3年間はすばらしい活躍をしたが、ピークはわずか3年であった。デビューして3年間で48勝を挙げたが、14年間で75勝68敗、防御率3.71の成績であった。八木智哉投手と同じくinverted Vのテイクバックをしており、コッキングのタイミングが極端に遅れる(肩が開く)のが長く活躍できなかった理由ではないかと思われます。骨盤も前足を着地する直前まで回転させないのも大きな原因です。
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まとめ

@テイクバックでinverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとると、内野手型、ショートアーム型の投球フォームとなる。

 肘関節を中心に前腕を高速で回転させる投げ方になり、肘に大きなストレスがかかって怪我をしやすくなります。また肩にも大きなストレスがかかります。

 肘を高速で回転させると、関節の軟骨も磨耗が激しく、肘を伸ばしたときに、関節内で骨と骨が急激に衝突するので、骨棘(骨の端がトゲのように出っ張ってくる)ができ、骨棘が欠けて分離したり(関節ネズミ)、骨折したりすることもよくあります。トミー・ジョン手術をする際は、同時に関節ネズミを取り出すこともよく行なわれます。

Ainverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとる投手には軸足を蹴り出すときに、前足を着地させる直前まで、骨盤を回転させずに投げる投手が多いので、このことがさらに怪我をしやすくしています。

B肩、肘は円を描くような動きが大事

テイクバックで肘は円を描くようにしなければいけません。

肩が円軌道を描くには、どうすればよいのか?

 円軌道を水平方向(横回転)と垂直方向(縦回転)に分けて考えます。

 水平方向の円軌道を描くには骨盤を軸足の蹴り初めから回転させる必要があります。前脚にかかる重力を利用して、膝を伸ばして脚を水平に回転させながら前に振り出します。
 軸足の股関節の外旋に引き続いて、膝の皿が前の方を向いて来たら(横向きから45度程度回転したら)軸足側の下肢の関節すべて(股関節、膝、足関節、足の指の関節)を一気に伸ばすことによって骨盤は速く回転します。骨盤の回転に伴って肩に水平方向の回転が得られます。

 垂直方向の円軌道を描くには上体の軸を少し2塁側に傾け、前脚にかかる重力によるトルク(回転力、力のモーメント)を利用して上体を起こしながら型に縦回転を与えます。

 肩の水平方向と垂直方向の回転速度の比率によって腕の角度が決まります。骨盤の回転速度が速ければ腕の角度は低くなりサイドハンドスローに近くなります。垂直方向の回転速度が主体になれば腕の角度は大きくなり垂直に近くなります。通常は両方の回転がバランスよく合わさり、スリークォーターになるのが最も多いパターンです。

 腕には慣性があるので、進む方向と逆の運動(上腕の内旋、肘を背中側に大きく引く動作「前足を着地寸前で行なうと非常に危険」)をさせると、肩関節、肘関節に大きなストレスがかかるので危険です。

 腕にはホームプレート方向のエネルギー(直線的エネルギーおよび回転エネルギー)を軸足の蹴り始めから積極的に与えることで、投球フォームはスムースに流れるようなフォームになり、怪我をしにくくなります。

 骨盤を回転させる際、等速度になると腕の遅れはなくなり、両肩と肘の位置は一直線上に揃うのですが、加速する際は腕の遅れが大きくなるので肩に大きなストレスがかかります。急加速は厳禁です。最初はゆっくりと、次第に回転速度を上昇させることが大事です。
 また、投球側の腕は肩で最初、引っ張るようにします。腕が両肩を結ぶ線からあまり遅れずに回転してゆくことがポイントです。

 肘をあまり曲げない投げ方をする人ほどこのポイントを意識する必要があります。この点に注意すれば、肘をあまり曲げない投げ方は肘に最もストレスがかからず、肩にも大きなストレスはかからず、トータル的に見て、最も怪我をしにくい投げ方だと思います。しかも球速も最も出やすいと思います。

 大リーグではボブ・フェラーの投げ方が参考になります。日本のプロ野球の投手では江夏豊投手の投げ方が参考になります。

江夏 豊投手(1967-1984)、通算206勝158敗、193セーブ、防御率2.49。『20世紀最高の投手の一人』、オールスターゲーム9連続三振、最高球速160キロ近かったと言われている。シーズン401個の三振記録はいまだ日本記録。
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江夏 豊投手のテイクバック(外野手型、ロングアーム型)
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江夏投手は1年目は肘を曲げたまま投げていました(内野手型、ショートアーム型)が、2年目からは肘を早めに伸ばして腕を長くして投げるようになり(外野手型、ロングアーム型)、肘の痛みもなくなり大投手へと一気に変身しました。マリアーノ・リベラ投手と同じテイクバックの方法です。2年目の20歳のとき、シーズン401三振という日本記録を達成しています。

 江夏投手は前側の脚の重力を利用して、骨盤を回転させながら軸足を蹴り始めていますが、肘を背中側に大きく引かないで(腕の慣性のため、加速でさらに後に引く力が発生するので)、肘も高く上げて(上腕の内旋が大きくなり、外旋させる仕事が必要になり前腕の遅れlay backが大きくなる)いません。

 球が速くて怪我をしない投手の投球側の肩の動く軌跡を見ると、ホームプレートに向けて直線的にはなっておらず、軸足の蹴り初めからフォロースルーまでスムースなカーブ(曲線)を描いています。江夏投手も同様です。最初から骨盤を回転させているおかげです。
 ソフトバンクの斉藤和巳投手の投球フォームと比較すると、その違いがよくわかります。斉藤和巳投手は前足を着地する直前まで骨盤を回転させていませんので、右肩の描く軌跡が直線的です。そのため肘を曲げて腕をムチのように使う投げ方になっています(内野手型、ショートアーム型)。これは日本の投手に多く見られる傾向で、松坂大輔、前田健太といった多くの投手がそうで、骨盤を回転させなかった分、前足を着地する直前に急激に腰を回転させざるを得ないので脇腹を捻りやすくなります。両投手が最近脇腹を痛めたのはそのせいだと思います。

 先発投手で最も平均球速が高いのはトミー・ジョン手術をしたワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグ投手の95.5マイルです。肘をムチのように使って、100マイル近い球を投げているので怪我をするのは避けられないのかもしれません。

右肩がボールのリリースまで直線的に前に進むステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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 2番目に球速が高いのはニューヨーク・メッツのマット・ハービー投手で、肘をあまり曲げない投げ方をしており、軸足で骨盤を積極的に回転させる投げ方をしており怪我もしにくい投げ方だと思います。

マット・ハービーの投球フォーム
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posted by HANG IN THERE YU at 09:07 | Comment(14) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月05日

投球フォームと腕の痛みとの関係

 内野手と外野手が投手に転向したとしたら、どちらが良い投手になれるでしょうか。

 どちらが怪我をしにくい投手になれるでしょうかと言い換えた方がこれからの話のテーマに合っているかもしれません。

 昔の大リーグの投手、例えばボブ・フェラー、ハイキック投法で有名なフアン・マリシャル等は、肘をあまり曲げず腕を伸ばして外野手のような投げ方をしていました。そのためか怪我もしなかったようです。

 内野手のような投げ方というのは、肘を大きく曲げ、肘を背中側にまで大きく引き、肩、肘の回りの筋肉を最大限、利用した投げ方と言えます。内野手はボールを捕球してから如何に短い時間で一塁までボールを投げなければいけません。いくら球が速くても、投球モーションが大きければ、一塁まで到達する時間が大きくなってしまいます。投球モーションが小さくても送球の速度が小さすぎれば同様に時間がかかってしまいます。それで一番時間のかからないフォームに落ち着くのですが、やはり外野手の比べれば肘は曲げ、肘は背中側に大きく引くフォームになります。
 大リーグの投手で言うと、ワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグ投手は内野手のような投球フォームだと言えます。そのためか、肘を故障して、トミー・ジョン手術を受けています。

 一方、外野手のホームへの送球時のフォームを見ると、イチロー選手のレーザービームのように体全体を使い、肘はあまり曲げずに腕を伸ばして投げています。軸足に体重をかけ、上体は最初、後に後傾しており、昔の大リーグの投手と似たようなフォームをしています。イチロー選手のレーザービームはアロルディス・チャップマン投手の投球フォームに似ていると昔、書いたことがあります。

 投手は速い球を投げ、かつ投球数が多いので、内野手のような投球フォームでは故障しやすいと言えます。したがって、投手は下半身を大きく使う外野手のような投球フォームの方が怪我をしにくいのではないでしょうか。

 以前から、肩、肘を使わないで下半身で投げた方が球速、怪我、制球すべてにおいて優れていると思っていたのですが、投球メカニクスと腕の痛みとの関係という記事(内野手型と外野手型の投球フォームではどちらが怪我が少ないかという内容)を見かけましたので原文(英語)を翻訳して紹介します。
 この記事ではある本を紹介しているのですが、その本では腕をムチのように使うことの問題点を指摘しています。これはストラスバーグ投手の肘の故障で最近、大きな論争となっている投球時のフォームinverted W(逆W)は肩、肘の故障につながることを指摘していると言ってもよいでしょう。inverted W(逆W)はテイクバック時に両腕を広げたときの形が英語の文字のWを上下逆さにひっくり返した形になっていることで、両肘が両肩を結ぶ線よりも高くなり、両肘が背中側に大きく引かれた形です。この形をとると、投球側の肘がムチのような使い方になり、肩、肘に大きなストレスがかかってしまいます。

The Relationship Between Arm Pain and Pitching Mechanics
投球メカニクスと腕の痛みとの関係

There is no question that throwing an excessive number of pitches beyond one's comfort zone can lead to problems.
快適な範囲を超えて投球数が増えすぎてしまうと問題が生じることに疑いはありません。

Even more impressive is the relationship between the way one throws and the chances of developing shoulder and/or elbow injuries.
さらにもっと印象的なことは投げ方と、肩と肘の両方、あるいはいずれかひとつとの関係です。

This relationship became clear to author Robert Shaw. Shaw observed throwing mechanics of different positions and defined the classic outfielder's pattern and the classic infielder's pattern. He noted that among pitchers who had long careers in Major League Baseball, all threw with a similar fluid motion of the classic outfielder's pattern.
この関係は著者のロバート・ショーによって明らかにされました。ショーはいろいろなポジションの選手の投球メカニクスを観察して、古典的な外野手型、古典的な内野手型を定義しました。彼は大リーグで長い経歴のある選手はみんな、似通った古典的な外野手型の、流れるようなモーションで投球していることに気づきました。

The classic outfielder's pattern maximizes speed and distance in a seemingly effortless long arm delivery with the ball delivered high above the head and the elbow extended and traveling in a "downward plane" in reference to the ground. Pitchers with this delivery mechanism developed good speed on the ball because of the long lever arm. They were also accurate because, with an arc that was vertical to the ground, they did not miss inside-outside and their curve balls were more effective because they dropped. Throwing was smooth with little torque evident on the shoulder or elbow.
古典的な外野手型は、見るからに力んでおらず腕を長く使った投げ方をしていて、スピードと距離を最大限度まで高めています。ボールは頭よりも高いところで投げ、肘は伸ばし、地面に対して下向きな面を腕が移動しています。この投球メカニズム(投球動作の連動)を持つ投手は長い梃子(テコ)のような腕があるので、ボールのスピードをうまく引き出せました。彼らは制球も良かったのです。腕の振りが地面に垂直な円弧を描いているので、内角外角を外すことがなく、カーブボールも良く落ちたので有効でした。投球はスムース(流れるよう)で肩や肘には明らかにトルク(回転力、力のモーメント)はほとんどかかっていませんでした。

The classic infielder's throwing pattern maximizes the quick release of the ball and improves accuracy. It involves a "short arm delivery" where the elbow is flexed and the arm is abducted to 90 degrees. During the acceleration phase, the shoulders "open up" creating a "whiplash" effect in order to generate speed. The potential for injury in this pattern occurs when the scapula (shoulder blade) can go back no farther and the soft tissues of the scapula, elbow, and shoulder are whipped forward under a great deal of stress.
古典的な内野手型はボールをクイックで(素早く)手から離し制球を向上させています。この型は肘が曲がり、腕が90度外転し、短い腕の使い方をしています。加速期には両肩は開き(上体がホームプレートを向く)、スピードを出すために鞭紐(ムチひも)の効果を作り出しています。

Shaw observed a jerking movement that was inconsistent and could not generate great speed without supreme effort—the "whiplash" puts maximum stress on the elbow and the shoulder.
ショーは瞬発的で突然動かすような動作に気づきました。この動作には、持続性がなく(長く続かない)、肩や肘に最大限度にまでストレスを加えて、鞭紐(ムチひも)の効果を極限まで使う努力をしなければ、大きなスピードを生み出せませんでした。

These throwing patterns make it clear that the mechanism of delivery is important. In fact, the incidence of arm and shoulder pain in pitchers with the short arm, infielder pattern was nearly 70 percent while those with the smooth, outfielder pattern was associated with only 20 percent. Robert Shaw's Book: Pitching: Basic Fundamentals, is published by Viking Press and is available through the Library of Congress. It is recommended for relevant exercises that help develop an understanding of the basics in proper throwing. It also will be of interest to serious pitchers as it discusses a successful approach to getting batters out.
これらの投球の型は投球メカニズムが重要であることを明らかにしてくれます。事実、短い腕の使い方をする内野手型の投手は、肩や肘に痛みが発生する症例の70%近くを占めていました。一方、投球動作がスムースな外野手型の投手はわずか20%を占めているだけでした。ロバート・ショーの本:「投球:基本となる基礎」はバイキングプレスから出版されており、国会図書館を通して手に入れることができます。この本には正しい投球の基本を理解したい人に最適な、練習方法も含まれています。また、打者をうまく打ち取る手順も解説してあるので、真剣に投球に取り組んでいる人には興味ある本となるでしょう。

Source: John Albright, MD
情報元:ジョン・アルブライト医師
posted by HANG IN THERE YU at 06:57 | Comment(4) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月04日

ダルビッシュ7回を零封も8勝目ならず

 Royals 1  Rangers 3

3:05 PM ET, June 2, 2013

Rangers Ballpark in Arlington, Arlington, Texas 


123456789RHE
KC000000010152
TEX10000002-360




W: T. Scheppers (4-0)
L: J. Gutierrez (0-1)
S: J. Nathan (17)

 ダルビッシュ投手、カンザスシティー・ロイヤルズ戦に先発し、7回を0点に封じ、勝ち投手の権利を得て、1対0の僅差で降板しましたが、代わったリリーフ投手が1点を奪われ、1対1の同点とされ、勝利投手にはなれませんでした。しかし、レンジャーズは8回の裏に弱冠20歳の2塁手プロファー選手が勝ち越しのソロホームランを放ち、勝ち越しました。さらに1点を追加し、レンジャーズが3対1でロイヤルズに勝ちました。

 ダルビッシュ投手は2回に、先頭打者を四球で歩かせた後、ノーアウト満塁とされましたが、センターフライに打ち取り、タッチアップした3塁走者が本塁でアウトになりこの回を無失点で切り抜け、7回を3安打、無失点に抑えました。奪った三振は6個、四球は2で、防御率は2.77になりました。投球数は99でした。
 ダルビッシュ投手の今シーズンの通算三振数は111で大リーグトップ、2位は91でシカゴ・カブスのサマージャ Samardzija, J、デトロイト・タイガースのシャーザー Scherzer, Mが並んでいます。


 この試合、勝ち越しのホームランを打った2塁手のジュリクソン・プロファーJurickson Profar選手は、怪我をして故障者リストに載っている正2塁主のイアン・キンスラー Ian Kinsler選手の代わりの選手ですが、ここ10試合で打率.324、2本塁打を放っており、キンスラー選手に負けない成績を残しており、レンジャーズ期待の大型新人選手です。体は大リーグではあまり大きくなく(6フィート、183センチ)痩せているのですがパンチ力もあり、足も速そうです。

 
ARLINGTON, Texas -- Jurickson Profar sprinted around the bases with a big smile after putting the Rangers ahead for good.
アーリントン、テキサス--ジェリクソン・プロファーはレンジャーズに勝ち越しをもたらした後、満面の笑顔を浮かべたままホームベースの回りをずっと飛び跳ねていました。

Maybe the only person happier than the 20-year-old rookie was his veteran manager.
おそらくこの20歳の新人よりも喜んだ人はベテラン監督ただ一人でした。

Profar hit a tiebreaking home run with two outs in the eighth inning Sunday, lifting the Texas Rangers over the Kansas City Royals 3-1 on Sunday.
プロファーは日曜日、8回2アウトで均衡を破るホームランを打ち、カンザスシティー・ロイヤルズ戦でテキサス・レンジャーズに3対1の勝利をもたらしました

Profar was recalled from the minors to replace injured second baseman Ian Kinsler on May 19.
プロファーは5月19日に怪我をしたイアン・キンスラーの代わりとしてマイナーから呼ばれました。

The top prospect is hitting .324 and hit his second homer in 10 games this season.
この最も期待が大きい有望選手は、今シーズン10試合で打率.324、2ホーマーを打ちました。

"I was just trying to get on base," Profar said. "I guess I did a little better there."
「ただ塁に出ることだけに勤めました」プロファーは言いました。「この試合ではそれよりも少し良い結果が出たようです」

Yu Darvish allowed three hits, walked two and struck out six as he left with a 1-0 lead after seven innings.
ダルビッシュ・ユウは3安打、2四球、を許し、6三振を奪い、7イニングを投げた後、1対0のリードのまま降板しました。

After the game, Darvish said he felt fatigued after throwing 99 pitches. Washington added Darvish told him he was out of gas and didn't want the Japanese ace to fight through another inning. 
試合後、ダルビッシュは99球を投げた後、疲労を感じたと言いました。ワシントン(監督)はダルビッシュが彼に疲れて余力がないと告げたこと、また自分が日本人エースにもう1イニングを投げさせたくなかったことを言い足しました。

ダルビッシュの目がくらむほどのパフォーマンス(動画)
Darvish's dazzling performance
06/02/1301:18
6/2/13: Yu Darvish shuts out the Royals over seven stellar innings, striking out six and only surrendering three hits
ダルビッシュ・ユウは7回を好投し無失点に抑え、6三振を奪い、3安打しか許しませんでした

Profar's go-ahead homer
プロファーの勝ち越しホームラン
06/02/1300:50
6/2/13: Jurickson Profar connects for a solo home run to right field to give the Rangers a 2-1 lead in the bottom of the eighth
ジュリクソン・プロファーは8回の裏にライトにソロホームランを放ち、レンジャーズが2対1とリードしました
posted by HANG IN THERE YU at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする